トイレ優先カードについて、腸ろう患者のトイレ事情を知って欲しい!
日本の報道は信用できるのか?
ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」にて、スウェーデンの環境活動家で16歳のグレタさんによる演説を、テレビでご覧になった方も多いと思う。
演説中に半泣き顔になりながら、怒りを込めて「How dare you!」(よくもそんなことが言える!)と感情的にアピールする動画は、かなりインパクトがあったと認める。
反面「国連」という理論性を求める会議に、感情アピールは場違いだと、批判的な意見もあるらしい。
だとしたら、彼女が「何を」「どう」「具体的に」訴えたのか、まともに放送しない日本のテレビ局はどうなのか?彼女の怒りと感情を高ぶらせたシーンのみを放送し、本来の活動内容やスピーチ全体を、どうして放送しない?
彼女は演説の後半で、二酸化炭素の排出量と気温上昇リスクに関する具体的な数値を出しながら、将来の世界気温上昇に伴う危機感を若い世代に訴えている。
その彼女の思想や具体的な活動内容を放送しないで、強い印象を与える攻撃的な場面だけを放送する日本のテレビ局・・・
信用していいのか?
トイレ優先カード
これも1カ月ほど前に、テレビで話題になった。
ご存じの方がいるだろうか?
http://kanagawa-colon.com/toilet-card/
「病気の為に、便意や尿意を、自らの意思で抑えきれません」と書かれたカードを表示して、トイレを優先的に譲ってもらう様に依頼するカードだ。
潰瘍性大腸炎や炎症性超疾患などの難病者がカード発起人になり、「かながわコロン」という潰瘍性大腸炎の患者会が配布を始めた。
しかしこれも賛否両論あり、結局は中止になったらしい。
HPによると【健常者の方でもお腹を壊すこともあれば緊急にトイレを必要とする場合もあるわけですから・・・】とのこと。もう少し慎重に検討するそうだ。
あぁ、どこにでも趣旨を正しく理解せず「特別とか優先なんて許さないわよ!」論があるのだなぁと、少々寂しく思った。
と言うのも、私はもう6年以上も「腸ろう」のお世話になっていて、細い命を繋いでいる身だからだ。私は現在でも口からの食物摂取以外に、一日約800キロカロリーを栄養剤で補給している。水分と合わせて約14時間ほど、点滴棒を持ち歩く。
だが問題は、そこではない。訴えたいのは、下痢なのだ!
難病ではないけれど、トイレコントロールに大変苦労する日々なのだ!
*今日はそのお話なので、スカトロジー系が苦手な人は、ここでブログを閉じて下さい*
イラストに見る腸ろう
先ずは「腸ろう」を知って頂こう。
「腸ろう」とは、嚥下障害や認知症によって経口摂取が難しい患者が、小腸に管を直接通し、そこから栄養をチューブで送る「経管栄養法」のひとつだ。「胃ろう」とは違い、胃を切除した患者にも利用される。栄養や水分を摂取を出来る様になる他、 誤嚥や窒息などが防げる。
私は1時間に65ccの栄養剤を、経管栄養ポンプを経由して直接小腸に送り込む様に設定する。ホンのおちょこ一杯程度、栄養剤はサラサラの液体だ。
初期の段階では1時間に30cc程度からスタートして、徐々に体を経管栄養に慣らしていくのだから、腸ろう患者の一日は、殆ど点滴棒と繋がっている。
ちなみに以下のイラストは、約2年ほど前のイラスト
夏バージョン
冬バージョン
この当時から、経管栄養ポンプの種類が変わっている。
通常の食事は、口で咀嚼され胃や小腸で消化するのだが、その前半をすっ飛ばし、直接小腸に液体を流し込むのだから、日常的に下痢が起こりやすいと想像に易いだろう。
ただし病気ではないので、堪えられない程の腹痛や嘔吐を伴う事はない。
どの様に下痢るのか?
*具体的な言葉は意図的に避け、数多くの「比喩」をご了承くださいマセ*
かれこれ5年以上前、義父が養老施設へお世話になる事が決まり、おっと~と義母と私の3人でお見舞いに行った時の出来事だ。
当時の私は、まだ腸ろうからの栄養補給に身体が慣れておらず、しかも抗がん剤中だった。今と違って口からの摂取は殆ど出来ず、腸ろうに頼りキリの栄養補給だ。
頭で想像してもらいたい。
ビニール袋に「何やら」入っている。
普通の人なら、それは適度な塊だ。もしくは柔らかいけれど固体だったり、最悪でも水分多めのヨーグルト状だ。
しかし私のビニール袋には、完全にサラサラの液体しか入っていない。
何かの拍子に、ビニール袋に小さな穴が開く。
鈍痛が駆け抜けるが、なぜ突然、穴が開いたのかも分からない。
塊なら中身は出ない。柔らかい固体でもヨーグルト状でも、力を込めて押し出さなければ、ある程度で詰まるだろう。
ところが私の中身は液体だ。何のためらいもなく、ぴゅ~っと飛び出す。
お見舞いの時の私は、車から降りようとシートからお尻を上げたとたんに、ぴゅ~っと中身が飛び出した。力を込めて穴を塞ごうとしても、そこはサラサラの液体、力では止まらず穴を塞ぐ術がないのだ。
私は養老施設のトイレに走った。なりふり構わず走ったが、トイレに着いた頃には全てが流れ出てしまった。
自分の意思では抑えきれないとは、こういう事だ。
数分前まで何ともなかったのに、どうしてこうなるのか?原因や法則が分からない。
大惨事に大切な事
私は運が大変よろしい。そこは養老施設のトイレだった。
棚の上にはおしり拭きシートや消毒液、大きめのビニール袋などが常備してあった。しかも個室は大きい。1階は大きな外来フロアーで、他に利用者が居なかったのも幸いした。
ワンピース(これも運が良い)の下は全てビニールに入れ、消毒液で綺麗に流した後、トイレからメールでおっと~に「失敗した」旨を伝えて、車で待った。
私の自尊心は、ボロボロだった。
余りにショックで、言葉も出ない。泣く余力もない。治療中の出来事だったからこそ、明るい未来を感じられなかった。
しかし、おっと~も義母も、何も言わなかった。
何も無かった様に「じゃぁ、一旦帰ろうね。おじいちゃん元気よ」という様な内容を話し、私の惨事には一切触れなかった。
もし「何をしてたん?」とか「具合が悪いんなら、来んければエエのに」とか、「匂う」とか「汚れた服は?」等と、誰でも聞いてしまいそうな好奇心を向けられたら、私は(ちょっと極端だけど)自殺しちゃいたくなったかも知れない。
それ程、大人の失敗は心に突き刺さる。
失敗をして、一番傷ついているのは、本人なのだ。
トイレの優先順位を検討する事も大事だが、自分の意思でコントロールできない難病患者であればこそ、その方の「自尊心を傷つけない様な心配り」が一番大事だと感じた。
では具体的に、どうすれば良いのか?
トイレの優先をお願いするカードは、簡単には検討が進まないだろう。
もしその列に、食中毒の様な重篤の症状の方や、妊婦さんや重い生理痛に苦しむ方がいらっしゃれば、むしろ優先順位なんか争っていられない。
だからもし健常者で、一般的なトイレをご利用の方々が出来る事を考えるとしたら、先に記した通り「自尊心を傷つけないようにしてあげて欲しい」と言うほかない。
具体的には「そっとしてあげる」事じゃないだろうか?
3年くらい前にさかのぼる。
抗がん剤も終わり、口から少しずつ摂取出来る様になった頃だと思う。そうはいってもメイン摂取は腸ろうで、ビニール袋にいつ穴が開くかもしれない状態は続いていた。
以下は女性トイレが2個室しかないスーパーでの出来事だ。下痢を起こした私は、普通の利用者より時間がかかる。
これはホンマの話。゚(゚´Д`゚)゚。
何人並んでいらっしゃったのかも分からないが、とにかく笑った声は「オバちゃん風」だった。冗談かも知れないが、余りに品が無さ過ぎる。
しかもご存じ、私は声が出ない。
通常はノックされたら、ノックを返して「入っています」の意思表示をするのだが、余りのしつこさに、もし私がこういう輩に人工喉頭器を使用して
*音量を気を付けて下さいね*
「スイマセ~ン!ただ今使用中ですので、少々お待ちくださ~い」
と明るい調子で応えたとしても、私の声をご存じなければ「何の音だ?」「人間じゃない?」と、騒ぎだしたら面倒な事になる。となると私は、何度ドアをバンバン叩かれても返事が出来ず、情けない思いを噛み締めるしかない。
QOLもクソもない。
お願いm(__)m
またいつもの「お願い」である。
世の中には私の様に、想像を超える身体でも生きている人がいる。
もしあなたがトイレに並んでいて、いつまでも出てこない、音もしない個室トイレがあったとしよう。
その中には、もしかしたら声も出せない身体で、腸ろう下痢と闘っている私の様な人間がいるかも知れないと、ホンのちょっとでエエですから、思い出して貰えぬだろうか?
そして暫くそのトイレのドアを静かに眺めて、こころ穏やかに待ってもらえる様にお願いをしたい。少々の音や匂いは、気付かぬ振りで‥。
*もちろん犯罪や意識不明などの気配を感じたならば、遠慮せずノックをして下さいマセ*
読んで下さってありがとうございます。
またDMでもコメントでも、お待ちしております。
私は元気です٩( ''ω'' )و
ではまたね!
※腸ろう患者の方とそのご家族へ
もしこのブログで不安を感じたなら、それは本望でないので、腸ろう下痢の対応について述べておきます。
1:ブログ中で具体的な表現は避けましたが、栄養剤がサラサラの白乳色といっても、出てくる水便の色やニオイは同じではありません。便色(茶色)で匂いもします。もし通常の便色や匂いと違えば、感染なども疑われますので主治医にご相談ください。
2:もし下痢が続くようであれば、下記を試してみて下さい
*1時間に設定する流量を少なくする
*口から摂取する水分、または腸ろうからの水分摂取を減らす
*栄養剤が冷たいと下痢をしがちになるので、お腹をカイロ等で温める
*身体が慣れるまで、昼間の活動中に腸ろうをする(夜中は避ける)
*出来るだけ腸が元気になる様な、運動や食事を心がける
3:もしもの時の為に、私は車に「紙おむつ」や「着替えの下着と靴下」「ウェットティッシュ」等を常備しています。少しでも不安解消になれば、それもまた良し。
4:身体はやがて慣れますが、大体半年から1年で腸ろうを卒業される方が多いと聞きます。私はちょっとナマケモノです(笑)ご自分のペースて腸ろうとお付き合いください。
ちなみに現在の私は、自分の流量や気温に対応できるようになっておりますから、上記お見舞いの様な下痢はしません。お出掛けも出来ますし、当初に比べてQOLは上がりますからご安心を!